Diary 春画アレコレ

「なんで春画すきなの?」って100回くらい聞かれるから冷静に考える

最近ありがたいことに「春画―ル」としてイベントや紹介などでひとに会うことが多いのだが、毎回聞かれる。

「そもそもなんで春画好きなんですか?」

ええ、そりゃ疑問だよね。世の中にはコンテンツが溢れ、時間とお金があれば何でも経験できる時代。楽しいことは山ほどある。

なのに浮世絵の、そのなかでも「春画」。

好きな理由聞かれても「芸術もあり、当時のひとびとが生き生きとしてて・・・」

とか曖昧に答えてたけど内心「ちがう、そんなもんじゃない」と感じていた。

"つながる"ということ

深く暗い情の海に沈んでいくような。背景の書入れ全然見えない。

春画を「今のエロ本」と定義してしまうと、なんてことない単なるマスターベーションの道具という印象になりかねない。

「エロ本」だって単に興奮を促すものだけではないだろうし。

艶本は「いかに興奮する材料を織り込めるか」も、もちろんあるが、

「あなたのことが好きで尊くて心も体も繋がりたい」という気持ちがあらわれている。(もちろんそれだけでもない)

しかし「心のつながり」は絵で、はっきりと伝えることが難しい。

そうなるとそれを「性器の繋がり」や「手を握り合う」、「口を吸う」ことで"つながり"を表現もしたんじゃないかな。

あなたに会えて嬉しくて胸がドキドキするよ

上の絵は喜多川歌麿の描いた絵。

女の子が彼の存在に喜び、抱き合う。彼女と彼の足の間はしっかりと繋がっている。

だって好きだから。

Twitterで懇意にさせてもらってる黒猫の究美。さんに画中の翻訳と解説をしてもらったよ

(黒究オリジナル解題)

(女)こんなしび(首尾)のいゝことハねへ。

いつそうれしくつて、うれしくつて、気がせへて(気が急つて)、むねがどき/\するわな。

此ころうち、いつそあいたくつて/\、そしてあつたらどういつてかういつて(どう言ってこう言って)と、いろ/\のこと(言)をためて、たのしんでいたが、うれしいので、ミんなわすれてしまつたわな。

(男)おれもやつぱり、おめへのとうりのせりふたから、なんにもいはすにはやく五六丁(一丁=一勝負)とぼさう。 アゝ/\それ/\。

こしををしてくんなよ。 こうか/\。あゝかわゆひ。からたかしひるゝやうな(体が痺れるような)。

ポイント

男の肩へすがりつくのは、額髪へ櫛を伏すように差した年増ざかり。

鬢尻上げのような髪結い道具を芯に結った髷はいわゆる天神結びであろう。

いずれも黒繻子の襟を掛けた七宝つなぎの間着に、蘭の裾模様を散らした上着を重ね、金襴緞子の帯をだらりと結び下げた風俗は深川あたりの玄人女を思わせる。

「胸がドキドキする。あなたに会ったら、どう言ってこう言ってって考えてたけど、

会ったら嬉しくで全部忘れちゃった」

すごく素直だし、感情は人間的であり動物的。脳で好きになって身体で熱くなる。

簡単なことをストレートに表現してくれている。

めんどくさくて生きにくい世の中、しかたないよ

「からだ」って本当にめんどうくさい。鷲田清一さんが「ひとはなぜ服をきるのか」で記述しているように、爪は伸びるし、体のどこかは悪くなるし痛くなる。

眠らないといけないし、腹は減るし、排せつもする。

血はにじむし、毛が生える。

そんな意味不明で面倒くさい男の身体、その互いの身体のちがいを比べて笑って見せ合って受け入れる。

「だって仕方ないよ、あなたはあなた。こんな身体なんだもの」

そんなあきらめさえ感じるカラッとした陽気な人生との向き合い方が、うらやましい。

こんなに交合をコミカルにたのしめるなんて!

いつからなんだろうか、和合がこんなにも隠される存在になったのは。

絵の中の人物たちはいつも変わらず性器を出して笑ったり踊ったり、宙を舞って口と口を重ね合う。

いつもそこには浮世の辛さをかき消す力が存在し、江戸の時代があり、「生きている」「生きていた」と実感する。

性が再び解放されつつある、今。「現代人がみる春画」というコンセプト

わたしは春画のおもしろさに気づけたけど、どうしたらみんなにも春画のおもしろさが伝わるか考えた。

春画を発信したい理由にひとつとして、

春画を観たいという需要の高まりにより国内で春画が観られる機会が増えて欲しい

という希望もあるからだ。

しかし学びの場である美術館や博物館で展示をするべきか、どのように展示するか

などの議論も必要であるため、簡単なことではない。

はなしは横道にそれたので春画のはなしに戻ろう。

どんなモノコトでもそうだけど、人が注目するものって「自分に関係があるもの」。

セックスってこんなに笑顔でしてもいいんだなと感じた一枚

好きなひとの膝枕で耳掃除をしてもらう。なによりの平和だ。

日常で感じる「このひとを大切にしたい」の気持ちが芽生える瞬間。たくさんあるよね。

そんなひとコマを絵とともに投げかける。

わたしの選んだ春画が何百年もの時を経てみなさまの心に留まり、癒されたり笑ってくれたらいいなと思っている。

そして当時の性の意識や文化風習が現代へと地続きであることも忘れてはいけない。

【画像:国際日本文化研究センター】

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