「なんだか魔女みたい。」
とここ最近言われるのだが、何をしているのかというと、女らしく?香り系のものをせっせと集め指で揉み嗅いだりしている。お香も作る。
白檀と香附子を混ぜると単体よりもぐっと良い匂いになる。
「ぬらりひょんが家に来る。」
友人に突然言われた。
「ぬらりひょんが出るなんて、いい暮らしをしているね。」と本気で思ったから、そう伝えた。
彼は私の返しについて飲み込み、
「夕げの支度がはじまるころに、鼻に感じるんだ。姿は知らないけど。白檀のような匂い。ふわっと匂うこともあれば、ツンと強いときもある。」
と言った。
彼は冗談なんか言わない。ほんとうにいるんだと思った。
「調べてみるとね、現れるのは月曜と金曜なんだ。不思議だろ?今は来なくなったけど。」
また来るといいな、と思った。
「ぬらりひょんって言ったら、歌麿の師匠の石燕が描いた妖怪絵本にある姿が印象に強くてさ、有徳人ぽいぬらりひょんのイメージにその薫りがそっくりだったんだよね。ぬらりょんは掴み所がないというのは、実は姿かたちの見えない妖怪だからなのじゃないかな。」
そっか。ぬらりひょんは姿がなくて、匂いだけなんだね。
「また、明日ね」と言って彼は寝た。
わたしの家にも白檀がある。
朝の身支度で靴下を取ろうとしたとき、横に置いてある白檀が、ふわりと香る。
ぬらりひょん、いたらこんな感じなのかな。